示現流という薩摩独特の剣法

前回の補足になりますが、中村半次郎こと桐野利秋の剣の強さを物語るエピソードが残されています。吉野村の郷士として極貧の生活をしていた少年時代、畑仕事の合間で毎日の剣の練習だけは欠かしませんでした。17歳〜18歳になると彼の夢は、城下の道場に通いもっともっと強くなりたいという気持ちだけでした。しかし彼の家から御城下まで片道約10キロ、行き帰りの時間を考えるとお昼をはさむためどうしても弁当の用意が必要でしたが、彼の家はその弁当を持たせてもらう事も困難なほど貧しかったのです。母親は半次郎の口にはだした事のないそんな願いを察してはいましたが、現実を見るとその願いをかなえてやる事は難しかったのです。
しかしある年予想以上の収穫があり、母親は弁当を持たせてくれました。彼は喜び勇んで城下の道場へと走ってゆきました。
道場の師範は、彼の入門を許す前に門下生のなかで一番強い者と立ち会あわせましたが、またたく間に半次郎が勝ち、次に師範代に相手をさせましたが同じく師範代が何もできないうちに半次郎が勝ってしまいました。
師範はその時「お前は入門しなくてよい。なぜならばお前の腕前はすでに目録どころか免許皆伝に値する。」と言われたそうです。
たぶんに、後世の人が創作した話でしょうが中村半次郎の強さを当時の人々が認めていたことをよくあらわした話だと思います。写真は彼の生家跡です。